訪問日:2022年11月13日
久能山東照宮、日光東照宮と並んで日本三大東照宮に数えられる仙波東照宮において、11月1日から23日までの間、川越市市制施行100周年を記念して、重要文化財の社殿群、三十六歌仙額をはじめとする宝物類、御神体(家康公)が公開されています。
※日本三大東照宮には仙波東照宮より上野東照宮のほうが相応しいと感じる人もいると思いますが、家康の霊柩を久能山から日光に運ぶ途中、喜多院に4日間安置したので、実際に霊柩が安置された聖地として、久能山東照宮、日光東照宮、仙波東照宮が日本三大東照宮とされています。
特別公開のニュースを知った時、川越には何度も訪れていますが、仙波東照宮の社殿の中には入ったことはなく、また御神体を拝観したことももちろんなかったので、絶対に訪れようと思い、機会を見つけて、訪れることができました。
拝殿、幣殿
川越駅から歩いて、仙波東照宮に到着。入り口に「仙波東照宮 特別公開」の立て看板があり、気分が高まります。また今まで仙波東照宮を訪れた際、数人の参拝者がいた経験しかありませんでしたが、今回はたくさんの人がいます。
石段の下に受付があり、体温検査、消毒の後、拝観料500円を払い、石段を登ると、拝殿に到着です。早速、中に入ると、ガイドの方がおられ、説明がありました。
現在いる場所は拝殿で幣殿が接続されているとのこと。幣殿は馴染みのない言葉でしたが、神へのお供物を置く場所だそうです。幣殿には、後水尾上皇筆の「東照大権現」の額、12枚の鷹絵額、金箔の狛犬がありました。
拝殿には36歌仙額、随身像があり、個人的に面白いなと思ったのは「東照宮」と書かれた額です。解説は特にありませんでしたが、「照」の字の下の4つの点などが鳩の形になっていました。鳩は八幡神の眷属であるため、「八幡宮」と書かれた額において、「八」の字が鳩の形になっているのはよく見かけますが、「東照宮」と書かれた額で鳩の形になっているのは初めて見たと思います。
八幡宮は源氏の氏神であり、徳川氏も源氏なので、東照宮に鳩の形を入れたのかなと思いました。幣殿の「東照大権現」と書かれた額は距離がありますが、「東照宮」の額は近くでよく見えますので、訪れた際は是非確認してみてください。
本殿
拝殿から降り、本殿へ。こちらもガイドの方の解説があり、入り口となる唐門には、ブドウとリスが彫られており、ブドウはたくさんの身がなる、リスは多産ということで、子孫繁栄を願っているとのことです。以前、名古屋城の本丸御殿を訪れた際にも、ブドウとリスの彫刻があり、その時、同じ話を聞いたことを思い出しました。
そして、いよいよ家康公の御神体とご対面です。私は神奈川県立金沢文庫で、かって東照宮に祀られていた家康像を鑑賞したことがあり、その像が衣冠束帯の坐像だったため、仙波東照宮の神像もそのような姿を想像していたのですが、葦毛馬に乗った甲冑姿であり、良い意味で驚きました。本像は家光の命で造られたので、衣冠束帯姿ではなく、甲冑姿であることに家光の家康に対する気持ちが感じられました。
葦毛馬に乗った甲冑姿は一般に勝軍地蔵の姿ですが、勝軍地蔵は右手に錫杖、左手に宝珠を持つ、一方、本像は右手に宝剣、左手に薬壺を持つ点が異なります。
※現在、右手には何も持っていませんが、明治時代に本像を拝観した氷川神社の宮司の日記に右手に宝剣を持つという記載があるそうです。
説明で「家康は薬師如来の生まれ変わりとされていたので、薬壺を持つ」とあり、調べると、家康が生まれた時、鳳来寺の薬師如来の眷属である真達羅大将像がどこかへ消えてしまったので、家康は真達羅大将の生まれ変わりという話があるそうです。
御神体以外にも建物の彫り物も注目です。正面には瑞鳥、鷹、鳩の彫り物があると説明があり、鳩は源氏を意味していると書きましたが、ここでは多産を意味していると思いました。
現在では鳩と言えば平和のシンボルですが、江戸時代にはそのようなイメージはなかったと思い、調べると、鳩が平和のシンボルであることは旧約聖書のノアの方舟に由来しており、1949年に開催された平和擁護世界大会のポスターに鳩が描かれたので、世界中に平和の象徴のイメージが広まったそうです。
また獏(ばく)の彫刻もあり、これは獏が鉄を食べるので、鉄がある世の中とは、戦争のない平和な世の中であるとされ、獏が平和の象徴とされているためとのことです。北面には犀(さい)の彫刻があり、犀は火を防ぐ霊獣とのことで、北からの火を防止するために北面に犀を彫刻したとのことです。
拝観後、御朱印を購入しました。仙波東照宮の建物の切り絵が横にある御朱印で徳川家の家紋である三つ葉葵の付いたクリアケースに入っており、良い記念になると思います。
最後に
ガイドの方の丁寧な説明もあり、とても満足度の高い拝観となりました。御神体は次にいつ公開されるかは分かりませんので、この機会に訪れることを強くお薦めします。実際に像を拝観して、家康のことを大好きだった家光の思いを皆さん自身で感じてほしいと思います。
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