国宝殿特別展「戦国と比叡 ~信長の焼き討ちから比叡復興へ~」の感想

戦国と比叡

訪問日:2021年11月21日
今年(令和3年)は、織田信長が比叡山延暦寺を焼き討ちした元亀の法難から450年の節目の年にあたります。そこで比叡山では、10月1日から12月5日まで、国宝殿において特別展「戦国と比叡 ~信長の焼き討ちから比叡復興へ~」が開催されています。

・戦国時代とお寺巡りが好き
・天海僧正所有とされる甲冑の実物を見てみたい
という主な理由から、本展示は絶対に見に行こうと決めていました。以下、展示を見た感想を書きます。

織田信長の比叡山焼き討ち

展示の第一章は「織田信長の比叡山焼き討ち」でした。信長が比叡山を焼き討ちした理由として、様々な説が挙げられていますが、本展示では、
・信長と敵対する浅井、朝倉を比叡山が匿った為
と明快に説明されていました。渡邊大門さんが「【戦国こぼれ話】織田信長はなぜ比叡山を焼き討ちにしたのか?その当然すぎる理由」という記事をyahooニュースに最近書いておられ、そこでも焼き討ちした理由として、

信長は比叡山が宗教者としての本分を果たさず、さらに敵対する朝倉・浅井両氏に味方したので、焼き討ちにしたにすぎない。理由は、たったそれだけである。

と書かれていますので、最新の学説に沿った見解なのだと思います。

細川政元が既に比叡山焼き討ちを実行していますので、信長も躊躇することなく、比叡山焼き討ちを実行したと思います。

豊臣秀吉と山門復興

展示の第二章は「豊臣秀吉と山門復興」です。
・天正12年(1584)5月、秀吉から山門復興の許状が出される。
・天正13年から根本中堂の再建が始められ、同17年10月に仮堂が完成した。
・文禄4年(1595)、秀吉は三井寺から弥勒堂を取り上げ、釈迦堂として移築した。
・横川中堂は、天正年間に秀吉の援助で復興し、慶長9年(1604)に淀殿の寄進により改築された。

今ある根本中堂は徳川家光による再建であり、豊臣秀吉が比叡山復興に対して何をしたかをあまり知らなかったので、知識が整理できて良かったです。また今の横川中堂が古いものに思えないので、確認すると、淀殿により再建された横川中堂は昭和17年(1942)に落雷による火災で焼失したそうで、現存しておらず、残念です。

天海と徳川家康

展示の第三章は「天海と徳川家康」です。比叡山坂本にある慈眼堂の本尊である慈眼大師坐像は立派でした。展示ではどうしても上から見下ろすような形になりますが、出来れば、像の前でしゃがみ下から見上げてください。感じ方が全く異なると思います。第三章の展示を見て、天海が比叡山復興に果たした役割の大きさを改めて感じました。

天海僧正所有の甲冑

甲冑は第一章と第二章の間に展示されていました。まず向かって右側から見ると、前立が龍に見えました。しかし、よく見ると龍とは異なり、麒麟だと思いました。展示の案内を読むと、やはり麒麟とのことです。麒麟は相手に飛びかかろうとする姿をしており、格好良かったです。

案内には「朱塗の水牛の脇立」とも書かれていました。水牛の脇立の意味をネットで調べると
・水牛の力強さにあやかりたいという願いが込められたデザイン
・古代インドでは水牛は聖なる動物とされ、仏教でも悪を調伏する大威徳明王の乗り物であることから、その霊力にあやかった
などが見つかりました。

当時の武将は生きた水牛を見たことがおそらくないと思いますので、戦勝祈願の仏として信仰された大威徳明王の影響が大きいのではないかと感じます。朱塗が血で染まったように見え、少し怖かったですが、神社の鳥居などが朱色なのと同じで、魔除けの意味だと思います。

また案内には「繰半月の指物」ともありました。大きな繰半月の指物が甲冑を更に偉大に感じさせ、仏像の光背と同じように思えました。加えて、先程の朱塗の脇立が「太陽」、こちらの指物が「月」のようにも感じられ、太陽と月のパワーも備えているのかなと感じました。

更に左腹の辺りにポケット状のものがありました。多分、小物を入れる袋だと思いますが、何かオシャレな雰囲気を醸し出しています。

最後に

特別展を鑑賞後、戒壇院と法華総持院東塔の中を特別拝観しました。伝教大師1200年大遠忌記念事業の特別拝観は訪れる価値がありますので、是非、この機会に比叡山に足を運んでみましょう。

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