訪問日:2020年1月20日
岡崎城にある三河武士のやかた家康館では2019年11月18日から2020年1月26日まで、企画展「武具に込められた祈り」を開催しています。案内には
戦国時代では、日本全国で大小様々な戦がありました。武将にとって戦で相手に勝つことは至上の目的であり、多くの戦国武将は戦の勝利を祈願して、神仏に祈りをささげました。また、鉄砲玉や矢の飛び交う戦場において自分の身を守ってくれる存在である神仏を武具に刻み、命を賭した戦に臨みました。そのため、武具には神仏を表す梵字やその姿が描かれたものが多数存在しています。平和になり、それらが装飾品としての役割を持つようになってきた江戸時代でも、神仏は武家にとって人気のデザインでした。中でも不動明王、摩利支天、八幡大菩薩は多くの武家が信仰していました。その他にも、よいことがあるようにと祈りを込めた縁起物のデザインも人気がありました。
今回の展覧会では、神仏や、武士に喜ばれた縁起物を意匠に取り入れた武具を展示します。これらの資料をご覧いただき、武士や製作者の思いや祈りを感じ取っていただけたら幸いです。
とあり、神仏と戦国時代に興味を持つ私にとって、見逃すことの出来ない展示であり、ようやく機会を見つけ、訪問することが出来ました。以下、印象に残った展示を書きます。
武具に込められた祈り
1. 紋柄威胴丸具足
阿波蜂須賀家に伝来したもので、兜に三神号(天照大神宮、八幡大菩薩、春日大明神)が書かれています。三社託宣で、それぞれが正直、清浄、慈悲を説いているそうです。胴に大きく卍があり、こちらもインパクトがありました。
5. 黒漆塗本小札紫糸素懸威胴丸具足
三鈷柄剣の前立があり、三鈷柄剣は不動明王を表すそうです。
6. 鉄黒塗四十四間総覆輪二方白筋兜
尾張藩の大道寺家に伝来したもので、摩利支天の梵字が前立にあります。大道寺家は北条家の家臣だった大道寺政繁を先祖とするそうで、大道寺政繁の子孫が尾張藩にいたとは知らず、驚くと同時に子孫が北条家滅亡後も武士として生き延びていたことを北条家ファンとして嬉しく思いました。
また蝶紋があり、これは北条家の家紋の向い蝶を改変したものとのことで、北条家のことを忘れていないのだなと思いました。
8. 鉄錆地不動明王打出二枚胴具足
胴に右足を踏み下げた不動明王坐像が大きく打ち出されており、今回の展示の中では一番印象に残りました。不動明王は、煩悩を断ち切り、災害や害悪を除き、諸願を成就させるので、多くの武将に信仰されたそうです。また前立にも不動明王立像があり、「不動明王を深く信仰していたのだな」と感じさせるものでした。
10. 鉄焦茶塗雨竜蒔絵二枚胴具足
菖蒲を模したと考えられる前立があり、菖蒲に武士が好む何があったのだろうと調べると、菖蒲は古来より不浄を払い邪気を避けるものとされてきましたので、悪魔祓い、災い除けになる、また菖蒲=尚武(武を尊ぶ)と同音から好んで用いられたそうです。
また雨龍は、龍に似ているが、角はなく、体は黄緑色で、尾は青く細いそうで、雨を司ると考えられているそうです。
12. 壷胡簶
龍が描かれており、鳳、亀、麟と合わせて、四瑞として尊ばれているそうです。今年の大河ドラマは「麒麟がくる」で、「鳳凰がくる」や「龍がくる」でもよかったでしょうが、「麒麟がくる」が一番響きが良いですね。
14. 鉄張懸銀箔置錐形変わり兜
前立が燕です。燕は渡りの習性から異郷と現世を結ぶ神秘的な鳥で、豊かさの証である常盤の国を往来する鳥と考えられ、縁起が良いそうです。燕のそのような話を知らず、印象に残りました。
19. 刀銘(表)正真/(裏)猪切」
作者は正真で、本多忠勝が所有したことで有名な蜻蛉切の作者だそうです。展示の刀は酒井忠次が徳川家康の前で猪を切ったことから「猪切」と命名されたそうです。蜻蛉切は知っていましたが、猪切は知らず、印象に残りました。
最後に
神仏と戦国時代に興味を持つ私にとってはとても楽しい展示で、随分長居してしまいました。神仏と武将好きの方には強くお薦めできる展示です。
おまけ1:清海堀 発掘調査
岡崎城では1月14日から2月28日まで清海堀の発掘調査をしています。清海堀は深さ約8メートルもある大規模なもので、当日作業している人を見ましたが、とても小さく見え、その深さに驚きました。2月1日に現地説明会があり、凄い堀なので、こちらも強くお薦めできるものです。
おまけ2:徳川家康騎馬像
令和元年11月2日に東岡崎駅に徳川家康騎馬像に完成したと聞いて、見るのを楽しみにしていました。ところが駅に着いてもどこに家康像があるか分かりません。観光案内所で尋ねると、東口改札を出て、少し行ったところにあるとのこと。
北口からバス乗り場の方向に歩き、エレベーターで3階に移動し、周りを見渡すと、少し離れたところに家康像がありました。若き家康公の姿、格好良いの一言です。
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